事業承継コンサルティングの費用相場|何にいくらか実額で公開
下地 貴之
代表社員・中小企業診断士
「事業承継の相談を専門家に頼みたい。ただ、いくら取られるのかがわからない」。この一点で足が止まっている社長は、想像以上に多いです。実際、費用を調べようとインターネットで検索しても、出てくるのは「会社の規模によって異なります」「一概には言えません」という但し書きばかりで、肝心の金額にたどり着けません。値段のわからない店には入りにくい、というのは商売をしている方ほど身にしみているはずです。
この記事を書いているのは、合同会社Enridge代表の下地貴之です。事業承継支援の現場で、山梨の中小企業の承継やM&Aに数多く立ち会ってきました。ここでは、事業承継コンサルティングに何をどこまで頼むといくらかかるのかを、業務ごとの内訳と現実的な金額で整理します。あわせて、当社が実際にいただいている料金もそのまま公開します。読み終えたときに「うちの場合はだいたい何十万円くらいだな」と当たりがつく状態を目指します。
事業承継コンサルティングとは、何をしてくれるのですか?
やっていることを一言でまとめると、「誰に、いつ、どうやって会社を渡すか」を一緒に設計し、渡し終わるまで横で走ることです。会社を売る相手を探してくる仲介業とは仕事の中身が違います。まずは何にお金を払うことになるのかを、はっきりさせておきます。
実務としては、おおむね次の四つに分かれます。
- 現状把握 — 決算書と事業の中身を読み、株主が誰にどれだけ分かれているか、個人保証や不動産の名義がどうなっているかを洗い出します。ここが甘いまま先に進むと、後で必ず戻ってきます。
- 承継計画の策定 — 誰に渡すか(親族・従業員・第三者)を決め、何年かけて何をするかを紙に落とします。金融機関や取引先に見せられる形にするところまでが仕事です。
- スキームの設計 — 株式をどう動かすか、退職金をいくら出すか、税金と手取りがどうなるかを、税理士と組み立てます。
- 実行の伴走 — 決めた計画を実際に進めるとき、後継者への引き継ぎ、金融機関との交渉、従業員への伝え方まで、月ごとに手を動かして支えます。
M&A仲介との違いも、あわせて押さえておきたいところです。仲介は「買い手を探して成約させる」ことが仕事で、報酬は成約したときにまとめて発生します。事業承継コンサルは、そもそも親族に継がせるのか、社内で引き継ぐのか、外に譲るのかという手前の判断から関わり、報酬は時間や期間に応じて発生します。この構造の違いが、そのまま費用の違いにつながっています。
事業承継コンサルの費用相場はいくらですか?
相場を一つの数字で言うことはできませんが、業務ごとに区切れば金額の幅はかなり絞れます。世間で語られている相場と、年商数億円までの中小企業で実際に動いている金額には開きがあるため、両方を並べます。私たちが日々の支援のなかで整理している目安のほうが、山梨の会社にはあてはまりやすいはずです。
業務 | 一般に言われる相場 | 中小企業の現実的な目安 |
|---|---|---|
初回相談 | 無料〜1万円 | 無料が多い |
スポット相談(2時間程度) | 1〜5万円 | 2〜4万円 |
株価算定 | 10〜30万円 | 10〜30万円 |
現状把握〜承継計画の策定 | 50〜300万円 | 30〜100万円(3〜4ヶ月) |
月額の伴走支援 | 月30〜100万円 | 月10〜20万円 |
右の列を見て「思ったより安い」と感じた方もいると思います。左の列に並ぶ金額は、社員数百名規模の中堅企業に大手コンサルティング会社が入る場合の水準です。従業員十数名、年商数億円までの会社に月100万円の顧問料を払う体力があるかといえば、普通はありません。規模に合わない見積りを出されたときは、遠慮なく理由を聞いてください。
もう少し実感の湧く形で、契約の総額でも出しておきます。当社が相談を受けるなかで整理している、よくある三つの型です。
- 計画をつくるところまで:30〜50万円。現状把握と承継計画の策定で区切る、いちばん軽い形です。
- 計画+月次の伴走:50〜100万円。計画を作って終わりにせず、半年ほど並走して進捗を管理します。
- 後継者育成・金融機関対応まで含めて1年:100〜150万円。息子さんへの引き継ぎを本気で仕上げる場合の水準です。
費用は何で決まるのですか?
金額を左右するのは会社の規模よりも、「誰に何を頼むか」の切り分けです。事業承継は一社ですべてを賄う仕事ではなく、コンサル・税理士・司法書士がそれぞれ守備範囲を持っています。この分担が曖昧なまま一社に丸投げすると、費用は跳ね上がります。
実際の役割分担は、次のようになります。
誰に頼むか | 担当する仕事 | 費用の目安 |
|---|---|---|
コンサル(当社) | 現状把握・承継計画・スキーム設計・実行の伴走 | 月額または一式 |
税理士 | 株価算定(相続税評価)・税務の判定 | 10〜30万円 |
司法書士 | 役員変更登記 | 2.5〜5万円+登録免許税 |
司法書士・弁護士 | 株式譲渡契約書の作成 | 3〜5万円 |
たとえば、息子さんに株と社長の座を渡す一般的なケースだと、当社の計画策定が30〜50万円、税理士の株価算定が10〜30万円、司法書士の登記が2.5〜5万円。合計するとおおよそ45〜85万円という並びになります。この内訳を先に見ておけば、一社から「一式150万円」と言われたときに、その差額が何の対価なのかを質問できます。
この表を見せると、多くの社長が安心した顔をされます。「専門家に頼む=言い値で全部持っていかれる」という警戒が、内訳を開いた瞬間に消えるからです。私たちが見積書を出すとき、当社が担当する部分と外部の士業にお願いする部分を必ず分けて書いているのは、そのためでもあります。
逆に、費用がぶれる原因もはっきりしています。スコープ(どこからどこまでやるか)を決めないまま金額だけ聞くことです。「事業承継をお願いしたい」という依頼は、範囲が無限に広がります。株の整理だけなのか、後継者の育成まで含むのか、金融機関との交渉に同席するのか。ここを最初に決めれば、金額は自然と固まります。当社が初回相談に60分を取っているのも、この線引きを一緒にするためです。
無料の相談窓口と有料コンサルは、どう使い分ければいいですか?
お金をかけずに相談できる窓口は、実はいくつもあります。使い分けの目安はシンプルで、方向を決めるまでは無料窓口、決めた後に手を動かす段階は民間と考えてください。順番を守れば、支払う総額はかなり下がります。
無料で使える主な窓口は次のとおりです。
- 事業承継・引継ぎ支援センター(各都道府県に設置) — 国の委託を受けた公的窓口で、相談は無料です。第三者への引き継ぎ先探しも扱っています。
- 商工会・商工会議所 — 経営指導員に相談できます。会員であれば無料の範囲が広く、専門家派遣の制度を持っている地域もあります。
- よろず支援拠点 — 国が設置する経営相談の窓口で、回数制限なく無料で相談できます。
ここまで無料で進めば十分ではないか、と思われるかもしれません。無料窓口が得意なのは「どういう選択肢があるか」を整理し、方向づけをすることです。一方で、公的窓口は担当者が数多くの相談を抱えており、御社だけに毎月時間を割いて、後継者の教育計画をつくり、銀行との面談に同席する、という関わり方はできません。手を動かす実行の段階に入ったら、有料で契約する相手が必要になります。
順番としておすすめしているのは、まず無料窓口で「うちは親族に渡すのか、外に譲るのか」の見当をつけ、方向が決まってから民間に有料で頼む流れです。逆に、方向も定まらないうちから月額契約を結ぶと、調査だけで数ヶ月ぶんの顧問料が消えます。無料窓口を使い倒すのは、けちなやり方ではなく、費用配分として理にかなった進め方です。
相談先の選び方そのものについては、事業承継は誰に相談すべきかを整理した記事にまとめています。窓口ごとの得意分野を比べたい方には、そちらが参考になります。
M&Aで会社を譲る場合、費用はどうなりますか?
第三者に会社を譲る道を選ぶと、費用の仕組みそのものが切り替わります。時間に応じて払うコンサル型ではなく、着手金+成約したときの成功報酬という組み立てになるためです。金額の桁も変わりますので、別枠で理解しておく必要があります。
M&A仲介・FAの報酬は、おおむね次の要素でできています。
- 着手金 — 契約時に支払うもの。無料の会社もあれば、数十万円から数百万円まで幅があります。
- 中間金 — 基本合意の段階で発生するもの。当社は設定していません。
- 成功報酬 — 成約したときに支払うもの。金額に応じて料率が下がる「レーマン方式」で計算されるのが一般的です。
- 最低報酬 — 成約金額が小さくても最低これだけはかかる、という下限額です。小規模な案件ほど、ここが実質的な費用になります。
レーマン方式は、たとえば3,000万円までの部分に10%、そこから5,000万円までの部分に8%、というように、金額の帯ごとに違う料率をかけて合計する計算方法です。仲介会社によって計算のもとにする金額(株式価格か、負債も含めた総額か)が違い、同じ売却額でも請求額が変わります。この違いは手取りに直結しますので、M&A仲介手数料の相場を解説した記事と報酬・料金のページで、計算例まで確認しておくことをおすすめします。
コンサル費用を抑える方法はありますか?
やり方はあります。値切るのではなく、頼む範囲と頼み方を工夫することで、支払う総額は現実的に下げられます。私たちが相談の初期にお伝えしている三つを挙げます。
- ゴールを先に一つ決める。事業承継といっても、「株は持ったまま社長の座だけ息子に渡す(所有と経営の分離)」のか、「株も経営もすべて渡しきる」のかで、必要な仕事量はまるで違います。前者なら数ヶ月、後者なら数年がかりです。最初にどちらを目指すか決めるだけで、見積りは締まります。
- 補助金を使う。事業承継・M&A補助金には専門家への支払いを対象にした枠があり、補助率は原則2分の1です。補助を受けるには、支援機関がM&A支援機関登録制度に登録されていることなどの条件があります。当社は補助金申請の支援も扱っていますので、詳しくは事業承継補助金の記事をご覧ください。
- 見積りを2社以上取り、内訳を出してもらう。「一式」としか書かれていない見積書は、後から追加費用が出やすいです。当社が担当する範囲、外部の士業に払う実費、追加で発生しうる費用の3点が書き分けられているかが見どころです。この3点を書けない相手は、そもそも仕事の設計ができていない可能性があります。
反対に、費用を抑えようとして失敗しやすいのが、相談を先送りにすることです。社長が体調を崩してから、あるいは後継者が別の道を選んだ後から着手すると、選べる手段が減り、税金も含めた総額はかえって膨らみます。承継計画は、動ける時間が残っているうちに作るほど安く済みます。
当社の場合、費用はいくらですか?
相場の話だけでは判断材料になりませんので、当社が実際にいただいている金額をそのまま載せます。ここに書いていない費用を後から請求することはありません。着手前に、契約内容・見積り・支払条件を書面でお渡しします。
サービス | 費用(税抜) |
|---|---|
初回相談 | 無料(60分程度) |
スポット相談 | 1回3万円〜 |
顧問契約(継続的な経営相談) | 月額5万円〜 ※要相談 |
経営診断・事業計画書策定 | 個別見積り |
補助金申請支援 | 着手金10万円+成功報酬 補助金額の10〜15% |
M&A仲介・FAとしてお手伝いする場合は、次のとおりです。
項目 | 費用(税抜) |
|---|---|
着手金 | 25万円 |
成功報酬 | 最低200万円〜(成約金額に応じて変動) |
中間報酬・違約金・途中解約金 | なし |
成約しなければ、負担は着手金だけで終わります。中間報酬を取らないのは、基本合意の段階でお金をいただくと、まとめること自体が目的になりかねないと考えているからです。レーマン方式の料率と、売却額ごとの計算例は報酬・料金のページに掲載しています。支援の進め方は事業承継・M&A支援のページにまとめました。
事業承継コンサルの費用について、よくある質問
コンサル費用は、会社と社長個人のどちらが払うのですか?
会社が支払うのが基本です。事業承継の計画づくりや経営改善は会社の業務ですので、支払も会社の経費として処理されるのが通例です。ただし、株式の移転そのものに関わる部分や、相続対策として個人の資産を扱う部分は、社長個人の負担になることがあります。契約前に、どちらの負担になるかを整理してお伝えします。最終的な税務上の取り扱いは、顧問税理士にもご確認ください。
顧問料の相場はいくらですか?
年商数億円までの中小企業では、月10〜20万円が一つの目安です。大手のコンサルティング会社が提示する月30〜100万円という水準は、社員数百名規模の会社を想定した金額です。当社の顧問契約は月額5万円(税抜)からで、訪問の頻度や関与の深さによって決めています。
無料相談だけして、契約しなくても大丈夫ですか?
問題ありません。初回の60分は、現状を伺って課題を整理する時間です。話した結果「まだ動く時期ではない」と判断されることも、公的窓口だけで十分だとお伝えすることもあります。当社から契約を急かすことはしませんので、その場で決める必要もありません。
費用はいつ払うのですか?
コンサルティング契約では、月額顧問なら毎月、計画策定のような一式の契約なら着手時と納品時に分けてお支払いいただくのが一般的です。M&Aの場合は、契約時に着手金、成約時に成功報酬という順番になります。支払時期は契約書に明記しますので、資金繰りの見通しが立たないまま進むことはありません。
山梨県外の会社でも相談できますか?
できます。当社は甲府市を拠点に、山梨と東京の中小企業を中心にご支援しています。オンラインでの打ち合わせにも対応していますので、まずはお問い合わせからご連絡ください。
この記事の執筆者
下地 貴之(しもじ たかゆき)/合同会社Enridge 代表社員。中小企業診断士、事業承継・M&Aエキスパート。山梨県事業承継・引継ぎ支援センター 統括責任者補佐(2017〜2025)として、数多くの経営者の事業承継・M&Aに携わる。現在は中小企業基盤整備機構 事業承継アドバイザーとしても活動。経営診断から承継後まで、税理士とも連携しながら一貫して支援している。
費用がわからないまま、迷い続けないでください
事業承継コンサルティングの費用は、会社の規模で決まるのではなく、頼む範囲で決まります。だからこそ、金額だけを先に聞いても答えは出ません。「うちの場合は何を頼む必要があって、それはいくらか」を一度整理してしまえば、判断はぐっと楽になります。
当社の無料相談では、まず60分お話を伺って現状と課題を整理します。その場で、どこまでを当社が担当し、どこからが税理士や司法書士の仕事になるかをご説明します。ご希望があれば、後日あらためて書面で見積りをお出しします。検討はゆっくりで構いません。しつこく営業の連絡を入れることはしませんし、「費用のことだけ聞いておきたい」という段階のご相談も歓迎です。まずはお問い合わせください。料金の全体像は報酬・料金のページでもご確認いただけます。